東京小唄・清元・三味線教室

せかれ

投稿日:2012年8月4日

せかれせかれて くよくよ暮らすえ たまに逢う夜はせかれては逢い
逢うてはせかれ 別れともない明けの鐘
【解説】
 明治中期に作られた上方小唄調の江戸小唄である。
 「堰かれ」は、水の流れを堰きとめることから、廓で楼主にとめられて男と公然と逢えぬことを言う。花街では「堰く」を「お履き物」と呼んだ。上へ上げぬという意味である。「たまに逢う夜はせかれては逢い」の「せかれ」は慌ただしい、せかせかと急がしいことで、たまたま男が楼主の眼をぬすんで忍んで来ても、邪魔が入ってなかなか二人きりになれぬ、やっと二人だけの世界になっても、気がせかせかして落ち着かぬうちに、すでに明けの鐘が鳴ってしまうのであった。「たまに逢う夜はせかれては逢い、逢う手はせかれ」が名文句で、江戸小唄の三下がりの替手が、この女の気分を表すようについており、送りもまた気がきいていておもしろう。
儘ならぬ恋を唄ったよい江戸小唄である。
(小唄鑑賞  木村菊太郎著より)

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