東京小唄・清元・三味線教室

鵺(ぬえ)

投稿日:2017年8月4日

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世阿弥原作の『鵺』という作品を国立能楽堂で観賞してきましたので、紹介させていただきます。

歌舞伎には、平家物語のなかにある源頼政の鵺退治伝説に基づく『鵺退治』という演目がありますが、能では、頼政に撃たれた『鵺』という弱者が主役になっています。
能では、戦記物、妖怪退治などをベースに、敗者、退治される者を主人公にして、その悲哀を通して人間世界の影、人生の暗い側面を滅ぼされる側の視点から描くことがあります。

能に出てくる鵺は、頭は猿、手足は虎、尻尾は蛇、(平家物語では胴体が狸)という妖怪です。

熊野から京都へと上る旅の僧は、摂津国芦屋の里(今の兵庫県芦屋あたり)に着き、洲崎の御堂で一夜を明かす。夜更けて、異様な姿の舟人が現れ、名を尋ねたところ、その昔、源頼政に射られて死んだ鵺の亡霊と名乗り、その時の様子を詳しく語る。亡霊は回向を頼んで舟に乗って夜の波間に消えて行く。
僧が夜もすがら読経していると、鵺の亡霊は本来の姿で現れ、頼政は一躍名を上げたが、自分は舟に押し込められて淀川の暗い川底に流され成仏できずにいる、山の端にかかる月のように我が身を照らし救いたまえと願いながら、月とともに闇へ沈んでいくのでした。
mak

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