投稿日:2026年5月2日
【歌詞】
神代より光り輝く日の本や 干珠満珠の世がたりを 今に伝へて陸奥の千賀の塩がま煙りたつ 霞に明けし松島の 眺めはつきぬ春の日の 潮の干潟をゆく袖に うつす薫りも懐しき 梅の花貝桜貝 みるめの磯のあかぬなる 花の跡踏む夏山の 筑波が覗く船の中 逢瀬の浦のさゝめごと いつか浮名も立浪の うちこんでいる真心に 待つとは恋の謎々も 解けた素顔の 夏の富士 清見の沖や 三保が崎 まつに本意なき青東風に 憎やあし辺の片男波その通路は星合の なかかけ渡す かさゝぎの 天の橋立きれ戸とは 裏表なる播磨潟 汐汲む海女のしるしとて みどりの秋を残したる 恋は昔のうたひもの アラめで鯛は 神の代に 赤目と召されそめしより 蛭子の神の釣り上げし 二世のかための懸鯛に 縁しを繋ぐ諸白髪 若やぐ尉と うば玉の 闇の景色は 漁火の ちらりちらちら月の出汐に 網引のの 節も拍子も 一様に ヤンラ 月の名所は よそほかに 鳴いて明石の浜千鳥 ヤサホウヤサホウ 主に淡路は気にかゝる 室の泊りを ソレ松帆の浦よ ヤサホウエンヤ 面白や波も静かに青きが原を なかにひかえて住吉と 名も高砂の夫婦松 雪にもめげぬ深みどり 栄ゆく家の寿をなほ幾千代も延ぶるなる 直ぐな心の清元と めでたく祝ふ泰平の 君が余沢ぞありがたき
【解説】
1844年に江戸の市村座で初演された祝儀曲です。古代から伝わる高貴な雅楽の世界を、江戸時代の美意識で三味線音楽(浄瑠璃)へと鮮やかに翻案しました。
この曲は、どこまでも続く海の平穏と、寄せては返す波のように重なる幸福を寿ぐ、非常に格調高い作品です。清元特有の繊細で色気のある節回しの中に、雅楽由来の荘厳さが溶け合っているのが最大の特徴です。
おめでたい席にふさわしい清々しさと気品に満ちており、清元の世界に興味を持った方がその「美しさ」と「品格」を知る上で、まず触れていただきたい一曲です。江戸の粋と古代の雅が響き合う、豊かな情景をお楽しみください。