残菊物語

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こんにちは

小唄の理解を深めるために、溝口健二(1898-1956、湯島生まれ。女性映画の巨匠と呼ばれ、一貫して虐げられた女性の姿を冷徹なリアリズムで描き、国際的に高い評価を受けた。代表作に『雨月物語』『西鶴一代女』)監督の映画史上に残る名作と言われている、村松梢風原作の『残菊物語』(昭和14年)を2015年カンヌ国際映画祭クラシック部門で上映されたデジタル修復版で観てみましたので、紹介させていただきます。

舞台は明治時代初期の東京。人気が出て天狗になっていたニ代目・尾上菊之助は、歌舞伎界の名家、五代目・尾上菊五郎の養子として甘やかされて育ち、周囲からもちやほやされていたため、自らの芸の未熟さに気づかずにいた。
そんなとき、義弟の若い乳母、お徳に自分の芸を批判され、自分の名声が義父、菊五郎の威光によるものと気づかされる。
そんなお徳に、いつしか好意を抱くようになる菊之助。しかし、二人の噂を耳にした母親は、乳母と夫婦になることは音羽屋の恥と、お徳に暇を出してしまう。それに憤慨した菊之助は家を飛び出し、大阪で舞台に立つようになるが、目の肥えた大阪の観客に受け入れられず、お徳と二人、旅回りに出ることに。それによって菊之助の芸は次第に磨かれていく。数年後、お徳は菊之助と別れるのと引き換えに歌舞伎の世界に戻れるように頼み込み、菊五郎もそれを受け入れる。
初日の舞台には、袖から菊之助の姿を満足そうに見つめるお徳の姿がありました。

哀しくも慈愛と情感あふれる姿を、演技の流れを断ち切らない「長回し」という手法で撮影することによって、芸に精進する役者を一途に支え続ける女を描きあげています。
戦前の歌舞伎の舞台や浪花の夏の風物詩、船乗り込みなど興味深い場面が随所に出てきますので、歌舞伎ファンにはお薦めの映画です。
You_Tubeにもアップされてますので、興味のある方はご覧ください。

ひとすじに(残菊物語)

河上渓介詩
春日とよ曲

一筋に
思うお徳のまごころに
引かれて我も名門を
すてて浪花の侘住居
残んの菊も色あせて