花巻

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こんにちは

日本橋近辺を散策したあと、日本橋室町にある、そば屋の老舗『砂場』(明治2年創業)に入りました。
天ざる発祥の店ということですが、お品書きを見ると『花まき』とあります。小唄を聴きはじめてから気になっていたので、熱いうどんでいただきました。

『花巻』
かけに焼き海苔をのせ、薬味はおろし山葵で、葱は入れずに、海苔の香りと麺の味を楽しむものである(蕎麦の辞典より)
浅草海苔は磯の花にたとえられることから海苔を花に見立てた「花撒き」が転じて『花巻』になったようです。
江戸末期の百科辞典『守貞漫稿』にも「花巻 浅草海苔をあぶりて揉み加ふ」とあり、調理の簡単さもあって、江戸時代から店でも屋台でも定番の種物でした。

さて、前置きが長くなりましたが、『花巻』と言えば『うどんやさん』
歌謡曲調の節回しで小唄情緒の世界を描き、対する三味線は、それに溺れることなく手数の少ない選び抜かれた音色で応えています。
まさに『花巻』海苔の香りとコシのあるうどんのように二つの才能が旨く調和して、いい味を出しています。
最初から最後まで「おしゃべり」で、一幕物の展開を見せているところが、この小唄の魅力であり、難しさでもあります。
女性なら一度は唄ってみたくなる小唄ではないでしょうか。
春日とよ五千代師匠(1919-98、浅草生まれ)が、鰹節でダシをとった汁(つゆ)のようなコクがあるけどさっぱりした美声で唄い上げている『うどんやさん』が絶品ですので、ぜひ一度、味わってみてください。
(解説は師匠の小唄選曲集第六集3頁を参照してください)

うどんやさん

昭和41年
山上路夫詩
四世清元梅吉曲

うどんやさん
あつい花巻 一つ作って
おお寒む寒む
いいえ 家の人とやりあって
あたし一人で飛び出してきたの
ほんとに あの人 いけない人よ
大嫌い
だけどね
やさしいとこもある人よ
あたし本当は 心の底から惚れてるの
あら ごめんなさい おいくら

(山上路夫:1936-、作詞家、昭和歌謡を代表するヒットメーカー。『世界は二人のために』『夜明けのスキャット』『翼をください』『瀬戸の花嫁』『学生街の喫茶店』『岬めぐり』などヒット曲多数)
(四世清元梅吉:1932-、清元節三味線方、作曲家。重厚かつ華麗な撥さばき、解釈に優れた演奏で、早くから天才の名をほしいままにしてきた。人間国宝)