こんにちは
飛騨高山を散策したあと世界遺産の白川郷に立ち寄り、師匠の十八番『風の盆恋歌』の舞台、坂道と水音の街、富山市八尾に「越中おわら風の盆」を見に来ています。
この歌の原作が、直木賞作家、高橋治(1929-2015、千葉県生まれ)の同名の長編小説『風の盆恋歌』です。
300年以上の歴史をもつ北陸の風物「風の盆」を舞台に、大人の恋の儚さを比類なき美しさで描いた名作です。歌を作詞した、なかにし礼が小説のストーリーを感動的に昇華しています。
この時期は、いつも八尾を訪れていたという著者が描きたかったのは、恋愛小説という形をとってはいても、実は「風の盆」そのものだったそうです。
八尾は井田川に沿った細長い坂の町である。
清洌な水が流れるこの地に今年も「風の盆」の季節がやってきた。
「風の盆」は、風の神送りと祖霊供養の盆踊りとが習合した民族芸能である。
秋風の立つ9月1日から3日間、『越中おわら節』が唄われ躍られる。
唄の町だよ
八尾の町は
唄で糸とる
(オワラ)
桑も摘む
三味線の
一の糸から
二の糸かけて
三の糸から
(オワラ)
唄が出る
唄で濡れたか
夜露を着たか
びんがほつれた
(オワラ)
風の盆
恋のつぶてか
窓打つあられ
開けりゃ身にしむ
(オワラ)
夜半の風
もしや来るかと
窓押しあけて
見れば
(オワラ)
雪ばかり
夕暮れとともに、万灯と呼ばれる、ぼんぼりに灯がともされると、ゆったりとした低い糸でリズムを刻む苦みばしった三味の音、それに乗せて胡弓の甘く悲しい音色が静かに流れてくる。
三味線が唄い、胡弓は唄が掬いきれなかった情感を訴える。
そして、どこからともなく現れる町流しの踊り手たち。洗練された身のこなし、そして、とりわけ美しい指先。
お囃子に合わせて賑やかに発散する踊りとは対象的に、内に向かって静かに陶酔していく踊りである「おわら風の盆」
静かに流れる時間に身を置きながら、この風景が永久(とわ)に続いてほしいと願っている自分がそこにいました。
風の盆恋歌
なかにし礼詩
三木たかし曲
石川さゆり歌
蚊帳の中から 花を見る
咲いてはかない酔芙蓉
若い日の美しい
私を抱いてほしかった
しのび逢う恋 風の盆
私あなたの腕の中
跳ねてはじけて鮎になる
この命 ほしいなら
いつでも死んでみせますわ
夜に泣いてる 三味の音
生きて添えない二人なら
旅に出ましょう 幻の
遅すぎた恋だから
命をかけてくつがえす
おわら恋歌道連れに
(テレサ・テンの数々のヒット曲を残した、今は亡き三木たかしが、日本の情緒ある風景、女性を描いた日本の歌曲を作りたいとして作曲しました。聴きたい方は師匠にリクエストお願いいたします)