投稿日:2012年7月17日
川風につい誘われて涼み船 文句もいつか口舌して
粋な簾の風の音に 漏れて聞こゆる忍び駒
意気な世界に照る月の 中を流るる隅田川
【解説】
江戸時代の隅田川のお船遊びは、主に江戸詰めの留守役や、お店(たな)向けの主人側で招待したり、されたり、またお屋敷の侍が、酒の席がはずんで出掛けることが多かったが、この風習は明治になっても続けられた。この江戸小唄は晩夏七月の夜の大川の涼み船、月は中天にかかって夜はいたく更けている。屋根船の簾はもちろん下されて、漏れて聞こゆるものは粋な爪弾きの音である。隅田川と屋根船と簾、月に忍び駒という小道具を並べて、好いた同志の口舌の文句を聞かせる趣向で、小唄らしい小唄となっている。
忍び駒=音のたたぬように工夫された特殊な駒
中を流るる=武蔵国と下総国の間を流れる隅田川の意