東京小唄・清元・三味線教室

阿古屋

投稿日:2018年11月5日

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晩秋や
六波羅密寺
阿古屋塚

12月の歌舞伎座公演は「阿古屋」ということで、京都六波羅密寺の阿古屋塚を訪れました。
阿古屋塚は源平合戦の平家側の武将で悪がつくほど勇猛であった藤原(悪七兵衛)景清の想い人、五條坂の白拍子、阿古屋の菩提を弔うために鎌倉時代に建立された供養搭です。平成23年に坂東玉三郎の寄進で銘が刻まれ、囲いと屋根が付けられました。
歌舞伎では「壇之浦兜戦記」の場面「阿古屋の琴責め」に描かれています。
平家の残党、悪七兵衛景清の行方を追っていた代官、畠山重忠は阿古屋を捕らえ詮議のため、琴・三味線・胡弓を弾かせます。しかし、その音色に一点の乱れもないことから、景清の所在を知らないとして阿古屋を釈放します。
阿古屋の見どころは、
1.拷問を三曲にした趣向
2.文学性、特にサワリ(振事)の文章の美しさ(サワリさえしっかり押さえておけば物語の全体が見えてきます)
3.楽器演奏
始めは琴の名曲「蕗組」、次は三味線の弾き唄いで能の斑女からとった「翠帳紅閨」、最後は胡弓で愛する者の身を案じる名曲「鶴の巣籠」です。
最高級の貴重な三味線のニ上がりの音色と深紅の襦袢の袖を親指にかけた弾き方がなんとも粋です。
女方屈指の難役といわれる「阿古屋」について、玉三郎が以下のように語っています。
阿古屋は今まで修行してきた三曲を弾いてお客様に見せるケレン(景物)にならないように、あたかも流麗に当然の如く音楽的に流れるようにすることが大事。そうすれば文学的で詩的な作品になると思うのです。
どう演奏するかは稽古の段階で役者がやるべきことですが、舞台では最初は役をやることより演奏することに終始してしまいました。その内に3公演80回ほどやると阿古屋の中に曲が入ってきました。自身が阿古屋になりきり曲に精通して曲を奏でることに専念する方が良いということが後々分かってきた訳です。つまり、役者として一生懸命演奏するのではなく、阿古屋として曲を無心で奏でるのが一番良いと理解できました。遥かな想像もつかない時空を考えながら舞台でやりこんでいくうちに上手さを通り抜けて透明感になっていきました。演じている役者は消えていかなければならないが、演じ手の魂だけは半透明に見えないと役の中に魂が入っていかないのです。
12月の歌舞伎座公演では、玉三郎指導のもと、玉三郎と日替わりで児太郎が「阿古屋」にチャレンジします。どんな阿古屋を演じるのか、今から楽しみです。
mak

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