投稿日:2011年10月19日
【歌詞】
初雪に降り込められて向島 二人が中に置炬燵
酒の機嫌の爪弾きは 好いた同志の差し向かい
嘘が浮世か浮世が実か 誠くらべの胸と胸
【解説】
初代清元菊寿太夫詩・曲
明治二十年頃、菊寿太夫が六十八、九才の時の作品と想像される。人力車がまだ調法がられていた頃、季節はずれの向島の水神で、男は浮名の立つのを厭う年配の客、女はこの頃売り出しの若い芸妓、しめし合わせて行きつけの料亭で落ち合った所、折
から外は初雪、しかも「初雪の大雪となる気配かな」で、大雪になって人力車が通わぬようになって、帰れなければもっけの幸いと、置炬燵で互いにお猪口のやりとりから、酒の機嫌で、その頃流行の江戸小唄を爪弾きで唄う。「誠くらべの胸と胸」は二人の心意気である。歌詞はすらりとして淀みないが、作曲は大いに技術をこらしたもので、清元調の色濃い作曲で「雪の合方」の高音を利用して、互いの熱を上げさせているので、唄は殊更派手な節廻しをせず、すんなりした中に良い味をきかせることが、この唄のコツであろう。
「小唄鑑賞」木村菊太郎著より)
☆お天気情報がない方が夢があっていいかも知れませんね。やっと寒くなってきました。季節がおかしくなってきて、着物を着るのに、困ってしまう時があります。今年の初雪はどうでしょうか・・・。梅と桜が一緒に咲いてしまうなどということのないように願いたいものです。