東京小唄・清元・三味線教室

日本橋(上)

投稿日:2019年1月26日

【歌詞】
笛の音も 曇りがちなる弥生空
暗き思いに葛木が 断ち切る絆 川水へ 流す供養の雛祭り
つながる縁の西河岸は
春で朧で御縁日
御地蔵様の御利生が 
利いてお神酒の酔い心地
一石橋の建引きも
意地が命の左褄

 
【解説】伊藤深水作・春日とよ曲
 原作 泉鏡花
小唄「笛の音も」は日本橋の第一幕「一石橋の朧月」を唄ったもの。日本橋は隅田川と外濠とを結ぶ日本橋川に架けられた橋で慶長七年に創設された。日本の中心の橋という意味で日本橋と名づけられこの橋の付近一帯を日本橋と呼んだ。
 一石橋は日本橋、西河岸橋の次にある。
葛木晋三が、姉の形見の雛人形に供えたさざえと蛤を可哀想だからと神へ包んで一石橋の上から川に放して笠原巡査に咎められるところでほろ酔いの稲葉屋お幸がこれも蛤とさざえを放すために通りがかって晋三をかばいこの夜の出逢いが縁となり二人は結ばれるのが「川水へ流す供養の」以下で、意地が命の左褄はお幸を指す。
 晋三との恋をあきらめた滝の家の清葉は晋三がさざえと蛤を放したという一石橋の上に立ってやるせない胸のうちを持って生まれた芸の笛の音に托すところが小唄の「笛の音も~断ち切る絆、川水へ」である。
 お孝と清葉の住む花街は、日本橋を北に少し行った
「桧物町」である。

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