投稿日:2012年6月15日
都鳥 流れにつづく灯篭の
よるよる風の涼み舟 波の綾瀬の水清く
心隅田の楫枕
【解説】
初代清元菊寿太夫曲
明治十一年七月に行われた「隅田川の流燈会」を唄った江戸小唄である。維新前まで行われた七月の盂蘭盆(うらぼん)に隅田川の水死人のための川施餓鬼(かわせがき)の行事を再興しようと考え、水神の森から毎晩都鳥の形をした灯篭を隅田川に流した。
百を数える都鳥が波のまにまに流れて、淡い影を水に落とした。百花園の萩を見た帰りに、夕食代わりの団子を食べ、流燈会を見物する人も多く、この灯籠流しは大変な評判を呼んだ。この灯籠は上流の綾瀬口から流されたものと見え、見物がてらの涼み船も盛んに漕ぎ上がっていったものと見える。
歌詞の中の「よるよる風の」は灯籠の寄りくることと夜毎の夜にかけたもの。楫枕(かじまくら)は楫(かじ)を枕にして寝るの意で、船旅のことである。
(木村菊太郎 小唄鑑賞より)