東京小唄・清元・三味線教室

白扇の(末広)

投稿日:2019年2月3日

白扇の末広がりの末かけて
固き契りの銀かなめ
輝く影に松が枝の
葉色もまさる深みどり
立ち寄る庭の池澄みて
波風立てぬ水の面
羨ましいではないかいな

[解説]
上田哥川亭詞、吉田草紙庵曲。昭和九年作。
さる銀行の重役の銀婚式を祝って作られた唄で、「末」は奥さんの名を、「まさる」はご主人の名を、「銀」は銀婚式と云うことを、読み込んだものだそうです。めでたい歌詞に荘重な節付けで、ご祝儀曲「末広」として広く唄われている。

[註]
銀かなめ=銀の要。かなめは扇を開く際に根本で止めるもの。この部位が壊れると扇子としての用をなさなくなるため、最も重要な部分である。ここから、「肝心要」の語源となった。
因みに中啓と云う扇があって、これが所謂末広と呼ばれるものである左図の左側が中啓で、右側は普通の扇である。中啓は肩から上の親骨が外側に反ったかたちをしており、折りたたんだ時、銀杏の葉のように扇の上端が広がるのが特徴である。折り畳んでいながら上端がなかば啓(ひら)くという状態から中啓と名付けられた。江戸時代の公家や武家・大名において、笏(しゃく)のように威儀を正したり、儀礼の具とされ、その後、能や狂言・歌舞伎の舞台でも使われ現在に至っている。神社仏閣でも使われ、大きな儀式の際、広い内陣で僧侶が同時に着座する作法として中啓を投げ落としたりする。

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