投稿日:2014年10月7日
【歌詞】
鐘一つ売れぬ日もなし 江戸の春 花の噂の高さより
土の団子の願事を かけた渋茶の おせん茶屋
あたしゃ見られて恥ずかしい 掛行燈に灯を入れる
入相桜ほんのりと 白きうなじの立ち姿
春信描く一枚絵
朧夜や 木の間にゆらぐ ぼんぼりの 灯影まばゆき櫻花
手拍子打てば ちらちらと 散るを惜しまん 春の宵
【解説】
「鐘一つ」は小林栄詩、春日とよ曲。一方「朧夜や」は春日とよ詩・曲で別の唄だが、春日派では、続けて唄うのが通例となっている。笠森お仙は、谷中の笠森稲荷前の水茶屋[鍵屋」の看板娘で実在した女性だが、鈴木晴信の美人画に描かれたことから、その美しさが江戸中の評判となり一世を風靡した今で言うアイドル。
「鍵屋」には連日、お仙を一目見ようと、江戸の町人が押し寄せ、お仙を画いた絵草紙、双六、手拭いなどが飛ぶように売れ、手毬唄、川柳、芝居の主人公にされたり、人形まで作られたとか。
鐘ひとつ売れぬ日もなし=鐘のように滅多に売れないものでも毎日売れるほど繁華だという意
土の団子の願事=願かけをする時には土の団子を供え、願が叶ったら改めて、米の団子を供える。
入相櫻=道成寺の入相桜が有名だが、ここでは単に黄昏時の桜の意。
笠森稲荷=谷中の感応寺境内にあった稲荷神社。